
「早く!早く!」子供を叱るお母さんの言葉の中で
「早くしなさい!」「さっさとできないの?」「なにグズグズしてるの!」
というものが大半だといわれます。これでは、まるで子供
が一日中急かされているようで、気の毒でもあります。果
たして「早く早く」という言葉が子供にとってプラスにな
っているのでしょうか? 動作の早い子供もいれば、遅い子
供もいます。動作の遅い子供のほとんどはそうしようと思
ってグズグズしているわけではなく、子供なりに叱られないように、少しでも早くしようと思っていることも多いのです。そこへ「早くしなさい!」「グズグズしないで!」という言葉を浴びせられたとしたら、焦ってしまったりして、ますます動がぎこちなくなったり、鈍くなったり、やる気を奪われてしまったりすることもあります。特に幼い子供ほど、着替えや、靴を履くときなどの動作に対して「グズグズしないで」「早く」などという言葉を浴びせてはならないといわれています。また自分で一
生懸命にやろうとしているところに、急いでいるからという理由で親が手をだしてしまた
りしていると、何もできない子供になってしまいます。「早くしなさい」という言は、幼
い子供が物事に一生懸命取り組んでいるときの思考力の広がりを抑圧してしまうことにも
つながり、さらには何かに取り組もうとする積極性や行動力にまで影響してくることがあります。これでは無限の可能性を持つ子供の能力を制限してしまうことにもなりかねませ
ん。「堪忍袋の緒が切れる」ことは人間誰だってあります。そんなとき感情に任せて子供
を叱りつける、怒鳴りつけるという方法は決して賢い方法ではありません。「我慢にも限
界がある」ことを子供に伝えることも、時には必要です。しかし怒りの感情を出すこで、
良い結果を招く怒り方であらねばなりません。親は「言いたいことをはっきり言う」ため
に、子供はそれによって「親の気持ちを知り、自分が取るべき行動を察する」ことです。
子供の反抗期
子供が反抗するとき、何か嫌なことがあったりして、不機嫌になっていることが往々に
してあります。そんなときは、子供の気持ちに「共感」してあげることで、子供は自分
を認めてもらえていると感じ、反抗は少なくなったり、なくなったりします。
子供の気持ちをそのまま言葉にしてあげればいいのです。7~8歳くらいの年頃になる
と、いくら「共感」の言葉をかけてあげても効果がないという事態に直面することがあ
ります。母親「ご飯ができたよ~。さぁテーブル片付けて!」子供「あ~、イラつく!
今から宿題しようと思ったのに」実際、たった今子供は宿題を出して始めたばかり。
母親「あらそう?今、宿題始めようと思ってたとこなのね。じゃあ、ご飯は後にる?」
子供「いいよ、もう!やる気なくなった!お母さんのせいだ!」だだをこねて、大の字
になる。父親「たまたま○○ちゃんが宿題を始めた時間と、お母さんがご飯の支度がで
きた時間が同じになっちゃったんだよね。仕方ないじゃん。宿題はまたあとでやればい
いじゃん。」子供「あー、いらつくいらつく!お母さんのせいだ!」いくら子供の気持
ちに共感しようと、子供の気持ちを言葉にしても、全く効果がありませんでした。
子供の言葉の裏側にある「イライラの真の原因」に共感してあげることで、子供の反抗
はピタッと止まるので不思議なのです。もしまた反抗することがあったとしても、共感
ポイントを探し出して共感してあげればきっと大丈夫だと思います。
やる気を引き出す
片付けをしない、言われたことをしない、というような理由で叱ってしまうことが多く
ないでしょうか。子供を叱ってばかりでは、叱るほうも、叱られるほうもストレスでし
かありません。「叱る=悪」というわけではありませんが、何かにつけて叱り飛ばすと
いう習慣は弊害でしかありません。
子供のやる気を引き出すのは「言い方」ひとつだと言っても過言ではありません。
言葉の言い回しを多く持っているほど、人は怒らなくて済むようになるのです。
叱ることの意味
子供を叱る場合、次の4つのポイントがあります。
・子供を一人の人間として尊重する、人格を認める
・子供に叱らなければならない理由を説明してわからせる
・再び同じ間違いを繰り返さないよう、子供自身に考えさせる
・子供に変わってもらいたい、と心から願う気持ちが大切
叱っていい子供のタイプ
精神面で安定した大らかな子供は叱ってもよいそうですが、神経質で気が弱い、臆病、
または意地っ張りな子供はあまり叱らないほうがよいと言われています。心理学におけ
る相手を上手に説得する方法のひとつに「感化⇒情報⇒感化」という方法があります。
これは相手に言いたいことをぶつける前に、相手への「配慮」でサンドイッチするやり
方です。そうすることで相手は気分を害したりすることなく、その言葉を受け止めるこ
とができるといわれています。
ほめしかり
子供の成績が悪かった場合などは、まず「頑張ったね」と努力を褒め、次に悪かっ
た内容を叱り、最後に「あなたはやればできる子なんだから頑張ればきっといい点
がとれるはずだよ!」と激励の言葉で締めくくるのです。
「褒める⇒叱る⇒激励」という順番です。
笑いしかり
私は体罰がキライです。体罰は最もおろかな叱り方だといわれます。教育現場では
「体罰が必要」という方も中にはいるようですが、私はそれは間違っていると思い
ます。そんな私でも以前、子供に手を上げたくなる衝動にかられたことがあります。
そのとき私は、子供をたたくかわりに、子供をくすぐることにしました。子供があ
まり苦しくならないように、ちょっと優しいくらいの加減でくすぐりながら、「今
度からちゃんと言うこときける?」と言いながら、くすぐり続けます。「わかった
!聞く聞く」と言ったらやめます。
■豆知識:くすぐり効果
一般的に子供はくすぐられると喜びます。特に乳幼児期は触覚などの五感が敏感
です。普段笑わない子供でも、くすぐってあげることで笑うようになり、心を開
くようになります。また寝起きの悪い子供を目覚めさせるのにも有効とか。あま
り度が過ぎると子供は苦しくて泣き出してしまうので、長くはやらないほうがい
いと思います。ある意味乱暴な方法かもしれませんが、体罰よりも何万倍もマシ
だと思うのです。これができるのはおそらく9歳くらいまでだと思います。
小声しかり
いつも大声で叱っているようなご家庭では、子供も慣れてしまって「またか」と
思うようになります。このような状態を心理的慢性化と呼びますが、このような
状態が続くと、子供は反抗心からか「わかってるよ」「うるさい」「うぜえよ」
という言葉で反撃し始めるでしょう。
大声で怒鳴ってばかりでは、親・子供ともにイライラとストレスが蓄積し、精神
的にも、健康面でもよいことはありません。まして信頼関係など築くことはでき
ません。ときどきは一喝することも必要なことがあると思います。しかし常日頃
怒鳴っている場合、その労力に対する効果は著しく低いはずです。無駄な労力を
使い、事態を悪化させる「悪循環」に陥っているのです。子供の心に効果的に伝
わっていないとしたら、これを改める必要があります。一説によれば「親の叱る
声がゆっくりで小さいほど、子供の心に入りやすい」そうです。もし日頃怒鳴り
すぎているというか方は、一度試してみられてはいかがでしょうか。
逆しかり
よく「相手を変えるにはまず自分を変えること」という言葉を耳にします。「自分
を変える」というとちょっと大変な感じがしますが、「自分の言葉を変える」と言
い換えれば、案外簡単にできそうな気がするはずです。これを子育てに応用する場
合、子供が約束の時間まで帰ってこなかったとき、子供は「また叱られる」とあら
かじめ覚悟していることもあります。そんなときは、叱りたい感情を抑えて「おか
えり。ちょっと心配してたんだよ」と逆に優しい言葉をかけてあげるといいでしょ
う。いい意味で相手の予想を裏切ってあげてください。
挑発しかり
人間の心理には、強制されればされるほど反発し「絶対やらない」と頑(かたく)
なになってしまうという一面があります。このような場合、言えば言うほど、悪循
環に陥ります。言い方ひとつ間違っただけで、それまで得意科目だった教科を、そ
れ以降一切勉強するのをやめてしまった子供もいます。
子供といえども一人前のプライドを持っているからです。そのプライドにちょっと
働きかけてみるやり方があります。「いや」「やらない」という子どもに対し、
「“やらない”んじゃなくて本当は“できない”んだろう」とちょっと挑発してみると、
子供は“できない”と言われたことにより、プライドを傷つけられた形になり、思わ
ずやり始めてしまうことがあります。このようにわざと挑発して、物事に取り組ま
せるということも時と場合によっては効果的です。
なるほど、しかし
子供はある程度の年齢になると「だって…なんだもん」という言葉を頻繁につかう
ようになります。これも成長の証ではありますしかし、単に“だって”という言葉を
使って自分を正当化しているだけという場合もあります。また反対に「だって…」
に続く子供の言い分がもっともなケースもあります。そのような場合、子供の言い
分に対しては、「なるほど。…なんだね。そうかそうか。」と受け止めてあげて、
「しかしあなたのやったことは○○○○で、本当はいけないことなんだよ」という
ように言い聞かせます。最初に「なるほど」「なんだね」「そうか」と共感してあ
げることで、子供を全否定しているのではないということが伝わり、子供はいきな
り注意されるケースに比べると、ずっと大人の言うことに耳を傾けるようになるそ
うです。「だって」を乱用して言い訳ばかりしている子供には、効果のある方法の
ひとつです。
皮肉はいわない
「子供を利口にしたければ、利口だといい続けなさい」という言葉があります。
子供がその潜在能力を発揮することができるか否かは、親からかけてもらう言葉が
大きく影響すると言われます。「全く、どうしようもないやつだ」と言いつづける
か「お前は頭がいい。やれば必ずできる」と言いつづけるかにかかっているといっ
ても過言ではありません。また、勉強に限らず、身体面のことに関して“皮肉”を言
うようなことは、絶対にしてはならないことのひとつです。
人格を攻撃しない
子供を叱る場合、大切なことは子供の人格、人間性そのものを否定するような言い
方は絶対さけるべきです。人格を攻撃しない子供を叱る場合、大切なことは子供の
人格、人間性そのものを否定するような言い方は絶対さけるべきです。
大きな失敗は叱らない
大きな失敗をしたときを思い出してみてください。そんなとき誰かがあなたを口う
るさく叱りつけたとしたらどんな気持ちでしょう。子供も同じです。大きな失敗を
したときほど、叱ってはいけません。親から言われる前に、本人が十分反省してい
ることが多いのです。このような場合、叱っても効果はないどころか、「憎悪」
「恨み」の感情を抱いてしまったりして、それがいつまでも尾を引いてしまうこと
もあります。大きな失敗をしたときは、黙って叱らないでいる方がかえって反省を
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