2017年9月4日月曜日

着物を着るとラッキーが降ってくる


日本人女性ならもっと着物を活用しよう
 私たちの祖先が、その気候風土や生活の中で育んで
 きた着物。今、私たちがよく見る着物は、いつの時代
 にできたかごぞんじでしょうか?
 実は、着物が今の形になったのは安土桃山時代です。
 安土桃山といえば、織田信長が天下統一を目指して
 いる頃です。そこに至るまでには、布や毛皮に穴を
 あけた貫頭衣と呼ばれる単純なものから、飛鳥奈良
 時代には中国の唐の文化の影響を受け、また平安
 時代になると日本人独特の美意識や意匠が加わって
 きます。皇族の方々が今も結婚の儀で用いら十二単衣
 などが出てきたのもこのころです。江戸時代になると、
 町人文化の発展とともに、着物は人々の生活の中で磨かれ、艶っぽいものに
 進化していきます。羽織、袴、振袖、足袋など、現代の和服のほとんどが、この
 時代に生まれています。
 明治維新を迎え、西洋風俗がどっと流れ込んできたことによって、和洋混交の一風
 変わった姿が見られるようになります。卒業式で袴にブーツを合わせたという人も
 いるのではないかと思いますが、それは、この時代のキャリア候補生だった女学生
 の格好です。大正、昭和と戦争の時代へと突き進む日本では、特に第二次大戦が
 始まる頃になると、「贅沢は敵」という世の中の風潮から、紬の振りなどもなくなり、
 筒袖の着物にモンペ姿が外出着になっていました。
 終戦とともにこの暗黒の時代は終わり、服装文化も劇的に変化していくことに
 なります。そして着物は日常着ではない。現代の姿へと発展していきます。このよう
 に、私たち日本人は、美しい四季の移り変わりを愛で、時代の流れをその時々に感じ、
 それを生活に取り入れてきました。それがそのまま、着物に反映されているという
 わけです。今、私たちは、昔ほど着物を身近なものととらえていません。しかし、
 着物が日常着でなくなったからこそ、その魅力が際立つ存在にもなっています。
 近くにありすぎたり、当たり前すぎて、見過ごしているものの中には、本当は一番
 基本的で、大切なものが往々にして含まれています。日本人だからできること、
 それをもっと見直していくことで、自分たちだけの個性というものが表現できるので
 はないでしょうか。
襟を正すということ
 襟を正すという言葉を聞いたことがあると思います。この言葉には、「姿勢、服装の
 乱れを整えきちんとする」という意味に加えて、「心を引き締め真面目な態度になる
 気持ちを引き締めて物事にあたる態度を示す」という意味もあります。
 昔、中国では、国を治める手段のひつとして、その日の吉凶を占ってもらう習慣が
 ありました。そしてそれを生業とする「日者」と呼ばれる占い師が何人もいたそうです。
 ある時、その中でも高名とされる日者に役人が会い、話を聞いているうちに、その
 日者の見識の高さに冠の紐を結び直し、服装を整え、姿勢を正し、尊敬と敬意を表
 さらずにいられなくなったというところからきているといわれます。
 着物は、その昔、中国の唐の文化の影響を受けて現代の形を作ってきました。つま
 り、着物はそのルーツにおいて中国の文化から少なからぬ影響を受けています。
 すなわち、この「襟を正す」という言葉の語源は、着物にあるといっても過言ではあり
 ません。実際、着物を着ると、その構造上背筋が伸び、それによって姿勢がよくなり
 ます。服装を直し、姿勢を正すということが、相手に尊敬と敬意を表すということだと
 すれば、着物を着るということ自体が、相手に尊敬と敬意を表すことにもなります。
 例えば着物の中でもカジュアルとされる、紬の着物(紬の着物にもいまはいろいろな
 種類があるので一概には言えませんが)は洋服で言ったら、ちょっとオシャレなジー
 ンズくらいの感覚です。この両方を、初めてお会いする目上のクライアントとの打ち
 合わせに着ていったとします。どちらが相手に対してより敬意を表す服装に感じら
 れるでしょうか?今は服装の感覚も多様なので、相手の方によるかもしれませんが
 たいていの場合は紬の着物でお会いするほうが気持ちが伝わるのではないでしょ
 うか。よく言われるTPOという考え方にも通じることですが、TPOに応じて服装を決
 るということは、相手に対しての気持ちを服装でどう表現するのかということです。
 気持ちというのは言葉で伝えるか、態度で表すか、何らかの方法で自ら伝える
 ことをしなければ伝わりません。特に、ビジネスや個人で親しくしてる人を除けば
 なかなか言葉で伝えるというのは難しいと思います。そんな時に着物を着れば
 相手に対し湧き上がる敬意と尊敬を、自然に伝えることもできるのではないかと
 思います。

 
                                      著書:黒柳聡子先生より
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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